産業と芸術、それにちょっと横暴とも思える欲のおかげで

ガラスの歴史は古代メソポタミアに始まるとても古いもので、生活に必須だった呪術や器などに使用され、産業として発展してきました。産業が発展するところには芸術もあり。磁器もガラス同様で、世界を渡り産業や芸術の世界で発展を遂げたのです。

中国から、始めて西洋に磁器が渡ったのは12世紀ごろ。その頃、西洋にはくすんだグレーや赤褐色の陶器しかありませんでした。そんななかで、中国の白くて硬い、また薄く光にかざせば透き通り、音も澄んでいる美しい磁器に、西洋人は魅了されたのです。

17世紀頃の西洋の王侯貴族や富裕層の間では東洋の「白い磁器」など東洋への憧れのシノワズリが大流行。これにより中国や日本から膨大な磁器が輸出されました。東洋から運ばれてきた磁器は「白い(黄)金」と呼ばれ金銀や宝石と同様かそれ以上の価値を持つものとして宮殿や大邸宅に飾られます。やがて権力者たちは自分たちで磁器を作ることで東洋に流れる膨大な富を得られると考えヨーロッパ各地でその事業に取り組みました。

最も熱を入れていたザクセン王アウグスト二世は時の錬金術師ベットガーを幽閉し、白磁器の研究を強要します。そうして9年間にわたる試行錯誤の末、ベットガーは、カオリン(磁器土)を使い白磁器の製造を成功させました。この成果を元にマイセンに「王立ザクセン磁器工場」が建てられ、製造の秘密を守るため工房をアルブレヒト城に移設。ですが、陶工たちの逃亡や買収などによりドイツから広まって、ヨーロッパ全土で白磁器が作られるようになっていったのです。

産業と芸術、それにちょっと横暴とも思える欲のおかげで今では白い磁器は安価で品質の良いものが大量に生み出せるように。といっても芸術品はやはり大量にできるものではなく、価格はえっ!と驚くほどの高級品。技術が進んでいるだけに百均のものと一瞬では判別つかないかもしれませんが、見る人が見ればわかるというもの。どの世界でも同じですね。陶器や白磁、さっぱり見る目がないので、養いたいものです

 

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