初心忘るべからず -世阿弥の言う初心とは-

世阿弥は、私にとって遠く及ばなさすぎるでも大きな指針です。
生まれながらに才能を持ち合わせていたであろう世阿弥は、その際に溺れることなく、本質を追求していきました。それでみいだしたまことの花は、見失いがちなことを教えてくれてます。

では初心とは何でしょうか。一般的にはじめたころの「志」として言われることが多いですよね。世阿弥の言う初心とは、ちょっと複雑で、これはまことの花とも連動するように思います。

しかれば当流に万能一徳の一句あり。 初心忘るべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。是非とも初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず。この三、よくよく口伝すべし
(『 花鏡 』-奥の段-)

この頃の花こそ初心と申す頃なるを、極めたるやうに主の思ひて はや申楽にそばみたる輪説をし 至りたる風体をする事 あさましき事なり。たとひ 人も褒め 名人などに勝つとも これは一旦めづらしき花なりと思ひ悟りて いよいよ物まねをも直にし定め 名を得たらん人に事を細かに問ひて、稽古をいや増しにすべし。
(『 風姿花伝 』-年来稽古条々-)

はじめたころの未熟さやみっともないさまに悔しい思いなど感じたと思います。その時こそ初心であり、花はこの時より培われたものが実り咲いたものであるので、決して初心を忘れることなかれということなのですね。そしてその初心は環境や年代が変わったときそれぞれにあるもの、例え老後だとしてもその時々の初心を忘れず道をすすむのだということです。一生続く道、いつも基本が大切なのですね

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